やる気の科学(1/2)

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2013-07-20

仕事の能率の上がらない社員。仕事で成果を出せない社員。仕事の覚えが悪い社員。

 

そういう部下を見て、どうも覇氣がなく、仕事に対して真剣度が足りない。いわゆる「やる気がないのではないか」と思ったことはないだろうか。

 

部下にそうした印象を持った上司としては「もっとやる気を持って欲しい」と社員に言いたくなるわけだが、ちょっと待って欲しい。仕事の生産性が低いといった問題の原因が、本当にやる気のなさから生じているのか、冷静になって考えていただきたい。

 

私もコンサルタント会社に勤めていた時代に部下を持ったことがある。そして、経営者として社員を持って13年以上になる。部下や社員を育てようとしていろいろと苦心してきた。その過程において、「やる気」が問題の原因だと考えたこともある。そして、部下や社員を連れ出してバーや居酒屋で個人的に話をし、やる気を持ってもらおうとした。多くの場合、話の最後には部下や社員から「よくわかりました。これからがんばります!」と威勢の良い返事をもらい、やる気を出してくれてよかったと安堵したものだ。

 

しかし、それで彼らの仕事の能率が上がったか、パフォーマンスが向上したかと言えば、一時的な改善は見られたこともあったが、ほとんどの場合、早晩元の状態に戻ってしまうのだった。これは読者の中には、同じような経験をされた方も多いのではないか。当時の私は、大きな思い違いをしていたのだ。やる気が仕事で成果が出ない社員の問題の原因と考えていたのだった。

 

実は、やる気は原因とはならない。仕事に対するやる気は、生産性や業績、成果と同様、結果として捉えるのが妥当だ。そもそも「やる気がない」とは「仕事の能率が悪い」を別の表現で言い換えただけに過ぎない。しかもそれは、事実として現れている現象ではなく概念に過ぎない。

 

それからこれが大事なのだが、物事の問題の解決を図るにあたり、概念としての心(こころ)の状態を原因とすることは賢明ではない。なぜなら、こころは主観的なものであるため、問題を曖昧なものにしてしまうのだ。解決しようとしている対象が曖昧であるとき、何をどのように分析し解決すればよいのかわかろうはずもない。強いて無理に答えを導くとすれば、それは直観による解決案の提示だ。しかしながらこの時の直観は、インスピレーションと言えば聞こえがよいが、実のところは山カンであり、言い換えれば当てずっぽうのことだ。

 

問題解決には基本原則がある。それは、結果には必ず原因があるとする考えだ。そして、原因はできる限り明確で具体的、客観的なものでなければならない。つまり、それは事実として起っている/表れている現象のことだ。

 

社員の仕事の能率が悪い、成果が出ない、仕事を覚えられないといった問題の原因には、職場の環境や情報の不備、業務プロセスなど、挙げれば数多くの仮説を立てることができる。それらの(問題の原因となりえる)仮説をYes/Noで答えられるように検証していくと、真の原因、つまりは対処すべき課題(=解決策)が明らかになるものだ。この方法については、本レポートの主旨ではないためここでは扱わない。ここでは、やる研レポートのテーマである「やる気」に関連した問題解決について述べることにする。

 

さて、「社員がやる気がない」だが、これはあくまで概念であり、解決すべき対象ではない。解決すべき課題は別のところにある。それは実際に表れている現象、起っている事実を明確にすることだ。

 

そもそも社員のやる気がないと認識しているのは、そのように判断する社員の行動が前提としてある。「仕事の取りかかりが遅い」とか「仕事を完了するスピードが遅い」「遅刻や早退、欠勤が多い」「会議で発言しない」「チームに協力しない」等々。そして、この社員の態度や行動が実際に起っている問題なのだ。

 

この問題に対して、上司が社員に望んでいることは「素早く仕事に取りかかる」「仕事の能率がよく生産性が高い」「仕事に熱心」「会議に積極的に発言し、チームに貢献する」ことである。それさえできていれば、ある意味、社員がやる気があろうがなかろうが実はどうでもいい。ただ、実際にはそういうことができる社員は、外から見てもやる気があるように見えるし、実際のところそれは正しい。

 

さて、やる気がある/ないの状態を、上述のように具体的な行動で示すと、何をどうすればよいか解決案の目処が見えてくるものだ。次回は「やる気の科学(2/2)」で、この解決策の具体的な方法について述べることにする。

 

 

岩元貴久





やる研

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