2016-02-29
社員全員がその持てる能力を最大限発揮してくれたら、会社としては何も言うことがない、とまでは言わないが、それは会社として最も望むことの1つであろう。
今回は、前回までのフロー状態と関連するが、違う角度から部下が持てる能力を発揮するための考察を述べたい。
そこでまず、つぎのことを考えてみていただきたい。
あなたは、普段は特段に優秀でもない部下が、いつにも増して働き、目を見張る成果を上げたりしたとき「な〜んだ、やればできるじゃないか。これだけのことができるんだから、普段からその力を発揮してくれよ」と思ったことはないだろうか。
これは、あなたにも同じことが言えて、上司から「やればできるじゃないか」と言われたことがあるはずだ。
では、どんなとき、あなたは普段以上の力を発揮したのだろう?何か普段とは違う要素があったのではないだろうか?
あなたは能力を発揮したときの、あなたのはたらきぶりを考えてみてほしい。
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いつも以上に集中していませんでしたか?
何よりも優先して働いていませんでしたか?
いつも以上に長い時間、仕事していませんでしたか?
常に仕事のことを考えていませんでしたか?
さて、話は変わりますが、あなたは過去に「お金(支払い等)」で困った状況に陥った経験はないだろうか?
月末近くになって、家賃の支払いができないとか、資金繰りに困って、このままだと乗り越えられない・・・といった状況。
実は、結構多くの人が一度や二度、お金に困った経験を持っているのだが、そのほとんどの人が、その困った状況から無事に脱している。
実はこのことが重要なのだ。私たちが能力(想像力、行動力、問題解決力等)を最高度に発揮する鍵は、ここに隠されている。
結論から言えば、私たちは切羽詰まった状況に追い込まれるとき、普段は鳴りを潜めている能力を最大限に発揮するのである。
これはどういうメカニズムかといえば、普段とは異なる価値観の優先体系に組み変わるということだ。
例えば、いつもは趣味のゴルフを第一優先にし、ゴルフの練習やラウンドをすることに熱中している人がいたとする。付き合う友人もゴルフ仲間だし、テレビもゴルフ番組、ネットサーフィンもゴルフ関連の情報サイト、時間があればゴルフクラブを磨いたり、駅のプラットフォームでは、傘をゴルフクラブ代わりにしてスイングの練習を試みる。
そんな人が、ある月、想定外に大きな出費が生じてしまい、翌月にはかなりお金に窮してしまうことになった。このままでは翌月の家賃などの支払いが不足してしまう。子供の塾の月謝も払えないかもしれない。
この状況になったとき、その人の中の価値観の優先体系(物事の重要度)は、いつもは第一優先であったゴルフは、かなり下位の方に下がる。代わって、お金がダントツで第一優先となる。
お金の支払いが解決するまで、その人の関心ごとは「お金」に集中して、他のことには目もくれなくなる。
何を考えるにも「お金」のことばかり、ゴルフ仲間と付き合うどころではない。なんとかお金を工面しようと、想像力を働かせ、ネットで調べたり、お金を借りれるような人にコンタクトをとる。
普段は決してやらないような行動もとるようになるだろう。自発的で積極的にお金を工面するための行動力をみせる。
これは人間行動学的に言えば、第一優先の価値観だけに集中している時の状態になっているとき、私たちはこうした最大限の「集中力」「時間」「想像力」「行動」を第一優先の価値観に向けるのだ。
そして、このとき、私たちの能力は最大限に発揮される状態になっている。
あなたの部下の能力を最大限に発揮させるための方法は、部下を切羽詰まった状態にしてあげること。そうすれば、部下は自ずと能力を最大活用して働き始める。
ただし、もうあなたもお氣づきだろう。
部下を追い込む形で、その能力を引き出すことは、1度や2度くらいまでなら通用するが、恒常的にそういうことはできない。
それこそ部下がストレスを感じ、健康を崩し、退社することになるだろうし、倫理的にも心情的にも賢明とはいえない。ブラック企業として社会的な非難をうけることにもなりかねない。
何よりも部下を含めあなた自身、そのような環境で仕事をすることは楽しくないし、働きがいを感じないであろうし、幸せとはいえないだろう。
では、どうするか?
もうおわかりだろう。部下が自身の第一優先の価値観に100%集中できるような環境で仕事をさせることだ。
部下の第一優先の価値観に合致した業務をアサインし、業務を指示するときには、その業務が部下の第一優先の価値観にどのように関係するのか、どのように役立っているのかを部下が認識するように伝えるのだ。
部下が自分の業務を第一優先の価値観と認識したとき、部下はこちらが黙っていても、その仕事に集中し、何よりも優先して取り組み、それだけに時間をつかい、よりよくなるよう改善する点を工夫し全力を尽くす。
部下の能力を発揮させられるかどうかは、すべてあなたが部下の第一優先の価値観と業務を結び付けられるかどうかにかかっている。